今日は塾とは全然違う話を一つ。
先週の日曜日にNHKで面白い番組を見ました。
タイトルの通り生殖の謎にせまる番組でしたが、目から鱗の話が多くありました。
特に面白いと思ったのが、『ヤリイカのオスの個体の繁殖戦術』でした。
そして、その精子の種類はオスのサイズによって違い、大きい個体だと小さい精子になり、小さい個体だと大きい精子になるそうです。
僕は大学で植物学やDNAの研究をしていたので、動物の生殖については全くの門外漢です。そのためこの分野の知識は皆無であります。
しかし、生物の精子や卵子は同じ種類の生き物であれば形や大きさなどは変わらないという知識はうっすらありました。
ここまでの話を聞いて、『オス個体の大きさの違いは成熟度の違いによるものであり、年数がたてば自然と個体の大きさは大きくなる。そのため成熟度が未熟な個体は精子が大きくなり、成熟度が高まるにつれ精子が小さくなる』と予想をしました。
しかし、この仮説は違うようです。
そもそもヤリイカのオスには2種類存在するそうです。
成熟しても小さい個体と、成熟して大きくなる個体、というように。
こちらは東京大学の岩田容子准教授のホームページで確認できました。
以下にHPの内容を引用いたします。
※先ほどの僕の仮説を否定する部分は太文字+下線を引いています。
【ヤリイカの代替繁殖戦術】
ヤリイカ Heterololigo (Loligo) bleekeri の雄には、成熟サイズが雌より大きい大型雄と、雌より小さい小型雄の2型があります。雄の成熟サイズは、雌をめぐる雄間の競争や雌の好みを通じて、繁殖成功を決定する重要な形質です。ヤリイカの雄には成熟サイズ2型がみられることから、繁殖戦術の違いを伴う生活史多型があると考えられます。しかし、繁殖行動に関する知見はこれまでほとんどありませんでした。そこで、成熟サイズの異なる雄の行動を飼育下で観察することにより、雄のサイズと繁殖戦術との関係を調べました。その結果、より大型の雄が雌への求愛や他の雄への威嚇を行い、雌とペアを形成し、雄が雌を下から抱きかかえるmale-parallel交接により、雌の外套膜内部の輸卵管開口部に精莢(精子の詰まったカプセル)を受け渡しました。一方、小型雄は頭と頭が向かい合うhead to head交接によりスニーキングを行い、雌の口の近くにある貯精嚢の周辺に精莢を渡しました。
強いペア雄とこそこそするスニーカー雄、という代替繁殖戦術は様々な生物種でみられますが、「戦術によってまったく異なる場所に精子を受け渡す」というヤリイカ類にみられる代替繁殖戦術は、他に例がありません。
もう驚きですね。
生物はこれだから面白い。
このような生殖戦略を取るメリットは何でしょうか??
僕の憶測は以下のようになります。
『大きいオスは多くの餌が必要となる。一方で小さいオスは少ない餌で成長できる。そのため、ヤリイカの餌が減ってしまった環境では小さいオスが生存に有利になり、大きいオスがいなくても繁殖できる。』
基本的には大きい個体の方が外敵から食べられにくくなるので生存に有利になります。
しかし、生き物が生きていく上で食べ物不足は重要な問題です。
少ない餌の量で生きていけるに越したことはないのです。
そのような2つの問題を解決する答えとして、このような形態になったのかもしれません。
※生物の進化に目的は無い、変異したいくつかの形質のうち環境に適応したものが残っていると考えるので、生き物が考えて形態を変えた!と考えてはいけないです。